研究概要 |
本研究は、東南アジアにおける小規模家族経営の発展方向を実証的データによって検討し、一層の農業発展に資することを目的として3カ年計画で実施したものである。とくに技術革新・制度革新の実態分析に加え、個別経営の経営革新の必要性を可能性を解明することを狙っている。 本年度は、東南アジア各国で政策的に展開されている水田利用の多様化における技術・経営問題の分析を継続するとともに、平成5〜7年度に国際学術研究によってタイで実施した農家調査を中心に畑作(野菜)農家データの分析を行った。すなわち、昨今の農業経営展開は高収益性の園芸作物の導入に向かっており、伝統的稲作農家の場合は水田転作、また畑作農家の場合は、野菜栽培の集約化という形を示している。水田利用の多様化は、政府が期待するほど順調に進展していない。その主要な原因は、水田基盤整備の欠如、野菜栽培技術の欠如および野菜流通制度の不備であることが明らかになった。しかし、タイでは輪中方式という独特の土地基盤整備技術の展開によって、水田の畑作地転換が進んでいる。 伝統的畑作農家の経営展開は、温帯野菜への需要拡大にともなって、高地、傾斜地の畑地化が著しい。輸入種子・科学肥料・農薬に依存しつつ、労働集約的な野菜栽培を行っている。しかし、投入財価格の高騰,生産物価格の変動によって経営的に必ずしも安定していない。さらに、傾斜地の野菜連作は土壌流出、一部圃場での連作傷害など環境問題を生じている。環境保全型農業の展開は必要となっている。
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