1.(1)昨年度のモンモリロナイトに加え、今年度は別種の粘土鉱物として、カオリナイトを供試試料に採用した。ここで研究分担者の助言をもとに、物理化学的に安定な懸濁液試料を作成し、定温条件下でコーン・プレート型粘度計により粘性率を測定した。これにより、 (2)粘土懸濁液の粘性率の固相率依存性を高い精度で表わすことが可能になった。その結果、両試料とも〔粘性率〕∝ Exp〔固相率〕の関係をもつことが、実験的にも確かめられ、試料による比例定数の違いについて、理論的な検討が進展した。 (3)さらに粘土鉱物の種類と固相率によらず、懸濁液の粘性率は、著しい「ずり速度依存性」を示し、非ニュートン性のチキソトロピー流動することが定量的に明らかにされた。 (4)つぎに、粘性率測定時の〔速度勾配〕と〔せん断応力〕の関係を実験的に表わし、外挿することにより、ビンガム降伏値(=速度勾配→0におけるせん断応力)の値を推定することに成功した。 2.一方、懸濁液において分散状態にある粘土粒子の重力下での沈降現象を経時的に計測した。実験条件を種々変えて測定することにより、モンモリロナイトの固相率2%以上の条件では、粒子・壁面間摩擦力の影響が決定的に大きいことが立証された。 3.モンモリロナイトについて1.で求められたビンガム降伏値と、2.で得られた粒子・壁面間の摩擦力を比較したところ、これらはオーダー的にもほぼ同じ値を示し、顕著な固相率依存性を有することが確認された。微小なこれらの値を検出し、理論値との定量的な比較・検討を可能にした点で、本研究の意義は大きい。
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