研究概要 |
本研究は,平成5年度・6年度・7年度の3年間にわたって行ったものである.近年の社会的な要請から,土木的整備は生産活動に対する社会資本投資という性格から生活環境の創出および改良という方向へ展開してきている.これらの行為は,いわゆるエコロジカルネットワークでいう,人と自然とのバッファー領域に属するものである.従って,質の高い計画を立案するには,このような人の活動と自然との関係の実態を調査したデータの蓄積が重要となる. さて,コイやフナは下流域や止水域(ため池・貯水池)での釣りの代表的対象魚種である.特にヘラブナ釣りを行う人々の間では専門の釣り会や団体が組織され,釣り場の清掃あるいは放流活動など社会的な活動も行っている.本研究の第1部では,こうしたヘラブナ釣りの実態を山形県内の釣り会に所属する人々へのアンケート調査および現地調査によって明らかにした.そしてこの結果を用いて,釣り人がため池や貯水池を評価する際の5つの要因について分析した.さらにため池や貯水池は釣り場として3つのタイプに分類された.次に,棲息環境条件を備えたため池や貯水池を新設あるいは改修した後,新たな施設に魚を放流することが問題となる.そこで,研究の第2部では,ため池における溶存酸素の鉛直分布を玉川ため池に4つのパイプを有したブイを設置して観測を行った.そして,植物プランクトンが溶存酸素の鉛直分布に与える影響について検討した.その結果,玉川ため池では,その影響が少ないことが判明した.また,溶存酸素総量の変化から自然状態への復帰に要する期間は約2カ月であると結論した.
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