本研究は、スプロール的に混住化社会が進展する農村地域を対象にした雨水流出解析法の検討を研究目的とする。その際、対象地域は複数の地目から構成されることになるから、土地利用形態の分布特性を考慮した分布型流出モデルを開発し、流出モデルの同定・検証が必要となる。研究成果の概要は以下の通りである。1.本研究目的の遂行には、自然丘陵山地地域を対象として提唱した流出モデルであるKiWSモデルの活用が有望と考え、本流出モデルを基礎にした流出解析手法を得た。すなわち、(1)河道配列構造に基づく分布型流域モデルの構成法、(2)角屋・永井の長短期流出両用モデルの特長を活用して、分布型流域モデルの斜面流への有効降雨算定法、(3)分布型KiWSモデルの構築とFORTRANによる流出計算プログラムの作成を行った。2.本流出モデルにより、流域の開発に伴う複数の地目から構成される流域を対象にして、直接成分のみならず、低水流出成分をも合成した流出解析が可能であることを数値シミュレーションにより確かめた。3.分布型KiWSモデル定数と長短期流出両用モデル定数との関連を明らかにするため、長短期流出両用モデルの分布型適用法を試み、斐伊川流域及び益田開拓農地造成域の出水資料に基づく解析事例を示した。4.長短期流出両用モデルの分布型適用法において、その適用性の向上を意図する流出解析法を検討した。すなわち、雨水流出現象に及ぼす流域地形効果を集中斜面長分布の特性で集約し、本分布特性が雨水伝播時間を想定した遅れ過程に反映するものとして、遅延降雨系列の発生法及び長短期流出両用モデルによる貯留型変換過程を組み込んだ流出解析法を提示した。そして、本解析法による有用性を益田開拓農地造成域での出水例で確かめた。
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