1.圃場整備事業の地域社会活性化効果についての理論的検討:平成5年度の調査研究では、まず、中山間地域を地方中核都市からの距離の相違によって、「遠隔中山間地域」と「近郊中山間地域」にわけ、調査対象地域を選定した。次に、地域社会システムの構造を踏まえて、圃場整備事業の地域社会活性化効果の定式化を試みた。その結果、効果の主たる構成要素を「人の定住」、「社会の再生産」、「地域資源の保全」の3項目に整理した。 2.「遠隔中山間地域」における実証的検討:そのような理論的な枠組みをふまえて、「遠隔中山間地域」の事例地域でアンケート調査を実施し、統計手法を適用して詳細に検討するとともに、統計指標による整備・未整備地区の比較を実施した。その結果、「人の定住」と「地域資源の保全」という側面では、両地区の相違をはっきりと確認することができた。一方、事業効果に関する農家の主観的評価データからは整備事業と地域社会の活性化をつなぐメカニズムとして以下の点が明らかになった。第1に、圃場整備が地域農業の機械化と省力化を進め、それが地域と農業のイメージを改善すること、第2に、事業の実施が経営合理化の契機となり、地域農業システム化の機運を起こしたこと、第3に、圃場整備事業の実現が一方で兼業の安定化を促進しつつ、他方で農家の「誇り」を増進させることにつながったこと。 3.研究の評価と今後の研究課題:本調査の過程では地元役場、地元農家、県振興局の各方面のご協力をいただいたが、同時にその調査・分析結果を研究会の場で、たびたびフィードバックしてきた。町長をはじめ行政担当者・地元関係者が「中山間地域における圃場整備事業の重要性」を理解するのに、そのような研究会が大いに役だったと聞いている。次年度には、「近郊中山間地域」についても同様の検討を実施する予定である。
|