研究概要 |
1.社会的活性化に関する事例調査:平成5年度に実証フィールドとして取り上げた島根県広瀬町で,農家代表者への詳細なヒヤリング調査を実施し,とくに「地域社会および組織の活性化」に関する事例を把握した.かかる調査結果を考察したところ,圃場整備事業が地域社会や組織を活性化する経路として,「圃場整備事業への参加・共同→人間関係の地均し→社会的単位の拡大→活動規模の拡大→活性化」と「圃場整備による改良→農作業の省力化/維持管理の省力化→時間的余裕の生みだし→活性化」が明らかになった.異なる地域特性を備えた地域であっても,圃場整備事業を契機に同じ様な社会・組織活動の活性化がみられたという理由から,圃場整備事業の実施は地域社会や組織の活性化の面においても一定の貢献があったと判定された. 2.「地域社会活性化効果」に関連する周辺調査:島根県斐川町および岡山県美星町で関連する事項のヒヤリング調査を行った.斐川町の事例では,圃場整備事業の推進が,農地の生産性向上のみならず,農村工業導入のための用地を計画的に生みだし,農家人口の定住に成功していた.また,近年,築地松の保全運動に全町をあげて取り組んでいるが,このような運動の背景に,圃場整備や排水改良などの農業基盤整備が大きく貢献していた.同じく,岡山県美星町の事例でも,美しい村づくり運動が全町的に展開しているが,その背景には,農業基盤整備事業の貢献があったことが明らかになった.
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