水路に繁茂する水草が流れにおよぼす影響を佐賀市内を流れる多布施川中流域において調べた。水路は水面幅約7mの台形水路で、観測当日の水深は約0.6mである。繁茂している水生植物の多くは「クロモ」であり、それに「ヤナギモ」が僅かに混ざっている。断面全体では、水草が極端に少ない部分が存在し、そこがミオのようになっている。この部分では流速が速く砂の堆積もみられない。主流向の変動流速の乱れの強さは主流の平均流速の18%にも達している。また鉛直方向の乱れ強度は主流方向の乱れ強度より約20%大きい結果がでた。このミオ部の変動流速のスペクトル解析では、主流方向で0.06Hz、鉛直方向で0.05Hzにピークがあるが顕著なものではない。水草の繁茂している下流での流れの特徴は、鉛直方向の流れにおいて乱れが非常に抑制されるされることである。2種類の水草では「クロモ」下流の方が「ヤナギモ」下流より乱れの抑制率が大きい。これは「クロモ」は「ヤナギモ」より幹が太く、葉が輪生していて、しかも剛性が強いためである。水草「クロモ」の下流での変動流速のスペクトル解析では、主流方向・鉛直方向いずれも0.067Hzで卓越し、パワーも他の周波数より非常に大きい。この値は「クロモ」の揺動周期を目測した値8〜19秒とほぼ一致している。すなわち「クロモ」は水平方向にも鉛直方向にも非常に周期性の強い揺れ方をしていることがわかる。一方「ヤナギモ」下流では主流方向で0.084Hz、鉛直方向で0.15Hzが卓越しているが、「クロモ」ほど顕著ではない。「ヤナギモ」は幹が細く、葉も単葉で長く柔らかいため流れによって複雑に揺れるためであろう。繁茂している水草を約10mに渡って、取り除いて測定した結果、主流方向の乱れのスペクトルでは顕著なピークは見られない。鉛直方向の乱れのスペクトルでは水草がある場合よりピークが高周波側に移動することがわかった。
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