研究概要 |
屈撓性を有する植物が流れの中に存在する場合、植物自身が流速の増大とともに屈曲を増し、さらには揺動が加わることにより、流れは極めて複雑となる。このような流れ場に対する理論的アプローチでは運動方程式中に流れの抵抗を表す項(流体自身から見れば付加応力に対応する項)が導入されなければならないが、植物の動的特性を基礎式に陽的に組み入れることは不可能に近い。そこで本研究では、流れは等流定常状態で、植物の揺動による効果は陰的に他のパラメータに含ませるモデルを考えた。また、植物の流れによる変形は静力学に基づいて基礎方程式をたてた。実験は、佐賀地方の沈水性植物の大半を占める「くろも」と「やなぎも」を実験水路(長さ7m,幅0.4m,高さ0.4m)に持ち込み、それぞれ流れと植物の長さを変えて実施した。 まず、流れの場は、植物群落内の流れとその外部の流れに分ける。植物内部の領域では、流水阻害がおこり、それにより流れの逓減や乱れの逓減が予想されるため、剪断力としてはReynolds応力だけでなく、粘性による剪断力をも考慮することとした。植物群域外の流れに対しては、植物による抗力と粘性による剪断力を無視した形で基礎式を誘導した。実験結果と理論値との比較は、ほぼ満足できる結果をえた。 植物の物理系に関しては次の方法で基礎式をたてた。すなわち、流水中の植物に作用する抵抗力は植物の射影面積と流速の2乗に比例すること、植物の任意点における曲げモーメントと植物の変形量の関係を静力学的に考慮するとの仮定から基礎式を作り、数値解析を行った。実験結果は理論値をほぼ再現した。 なお、現在植物群による底質の移動・堆積現象については、実験を継続している。
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