農山村の環境整備計画に関連し、農業と水環境に関する2つの課題を検討した。その一つは農業を営むことによってもたらされる水質汚濁・悪化の問題であり、他の一つは、農山村の特殊環境から発生する異臭・悪臭の問題である。前者の水質の問題は社会問題にまでなっている。河川に流入する汚濁物質が同量であっても、流量によって河川の水質は変化する。また、河川流量は降水量に伴って経時的に変化し、農業用水路では農地からの地下浸透水流出量の影響が灌漑期・非灌漑期で異なるため、水質は経時的・季節的に変動する。そこで、宮崎県内の河川水質データと河川流量データの周年変化、経年変化を宮崎県発行環境白書と宮崎市発行公害時報に基づいて、水質の変化特性を流量年表に基づく河川流量との関連から検討した。その結果、特に全窒素の項目についてその水質は環境基準を大幅に越えている上に、水質の悪化の進行が顕著であり看過することのできない状況にある。水質の改善策の検討と水質の変化の傾向を長期的に追跡する必要がある。 後者の問題は、特に養豚・養鶏を営む農家の多い南九州畜産地帯における住民の公害の第一位にランク付けされており、環境アメニティを論じる場合無視することができない。この悪臭・異臭の原因は明確であり、問題は如何にその対処策を講じるかである。河川環境を守るために、家庭の生活雑排水とし尿を微生物を使って戸別処理する合併処理浄化槽の設置や、集落排水事業が実施され、家畜糞尿については有機肥料化処理施設やEM菌(有効微生物群)による処理等が実施され、悪臭・異臭の消臭化が実施され始めている。これらの実施による水環境の改善効果を追跡調査し、環境変化の評価を検討する必要がある。
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