研究概要 |
平成5年度は埼玉県中川流域を対象に灌漑期、非灌漑期にわたって調査研究を行った。調査内容は、主要排水河川における流量観測と水質測定・分析(水温、pH、DO、EC、濁度、BOD、COD、SS,T-N、T-P)である。研究実績の概要を以下に示す。 (1)還流特性としては、河川流域内への流入量(見沼代用水が主要水源となっている)に対して流域外への流出割合の大きいことがわかった。 (2)水質特性のよく示されているCOD、T-Nについては河川流量の変動が濃度の変動よりも大きく、河川流量の増大とともに濃度は低下傾向にあることがとわかった。 (3)SSについては、流量の変動の方が濃度の変動よりも大きく、河川流量の増大とともに濃度が上昇する傾向がみられた。 (4)河川水質の浄化機構について、河川底泥を採取してその粒度分布や比重を測定し、かつ現地の採取土を用いて浄化実験を行ってみた。その結果、粘土分の多い土の場合はあまり浄化機能は見られず、低平地河川での河床への土砂体積メカニズムを検討する必要性が認識できた。 (5)以上の検討結果から、中川流域での反復灌漑機構が下流地域の河川流況を安定化しかつ水質保全に大きく係わっていることが判明した。今後の中川流域での水利改良において、こうした還流特性を活かしつつ、農業用水の地域保全機能を配慮した用水量の算定を行う必要がある。
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