研究概要 |
平成6年度においては、千葉県大利根用水地区を対象に調査を行った。本用水は利根川の支流黒部川を水源として取水され、幹線用水路は東幹線と西幹線に分岐されて導水される。地区内を東西に流れる新川を基幹排水路として、これに七間川、新七間川などの支線排水路が流れ込む。今回は、新川上流左岸地域に属する七間川と新七間川流域(東幹線がかり)を対象に農業用水の還流機構と水質特性について調査を行った。 調査の結果、各排水路には水位調節水門が建設されており、水位を上昇させることによって水田への配水位を維持させるとともに、反復灌漑機能を維持させるものであった。したがって、東幹線用水から取水された用水はすべて七間川と新七間川最下流部に設けられた水門で堰上げられ、ここで貯留された後再度灌漑用水として利用されるというシステムが確認された。このような水位調節操作は、地下水位の保持にも貢献し、水田の浸透ロスを減少させることにもつながり、地区全体としての用水使用量節減に貢献しているものであった。 七間川流域において水収支を検討した結果、流域内供給量が0.366m^3/sであったのに対して七間川最下流部への流出量は0.579m^3/sであった。この間蒸発散量を考慮すれば流出量の方が少なくなるのであるが、当地区では逆に流出量の方が多かった。これはおそらく上昇していた地下水が七間川に滲出してきて排水路の流量を増加させたものと考えられる。なお、調査時には七間川水門は開放されていた。 水質については、DOは2〜7mg/l、ECは400〜570μS/cm、BODは2〜5mg/l、CODは6〜11mg/l、T-Nは2〜4.2mg/l、T-Pは0.1〜1.3mg/lと、反復灌漑の行われている本地域の水質は全般的に不良であった。なお、今回井戸水を採水して水質を測定したところ、特にECは1,145μS/cmと高く、海水の進入による影響が確認された。
|