平成7年度においては、扇状地河川地区として神奈川県足柄平野を事例にとって調査研究を行った。足柄平野においては扇状地形にあって農業用水路と排水路が兼用水路として利用されており、しかも複雑に入り組んでいる。主要農業用水源は二級河川酒匂川から取水する文命用水路であるが、酒匂川は富士山の融雪水を集水してくるために、また発電との共用取水のために水温が灌漑期でも10〜20℃の範囲しかなく、灌漑形態は田越し灌漑の方法をとっており低水温による障害をこの灌漑方式で防いでいる。 研究の方法としては、地域内を2つのブロックに分けて水収支と水質分析を行った。その結果、水収支については浸透水と蒸発散量を除いて地区内に取水された農業用水のほとんどが下流域に還元してくることがわかった。浸透量は日減水深にして30〜50mmであった。 水質については、上・下流ブロック別に負荷量の減少率をみると、CODは-23.3%、BODは-35.3%、T-Nは-17.2%とかなりの減少傾向が見られた。水田率については上流が44.3%、下流部が30.6%と上流部の方が大きいところから水田の希釈機能も手伝って負荷量の減少につながっていると判断できた。 今後は農業用水の地域保全機能を配慮した水路構造、すなわちなるべく土構造の水路形態をとり、水路内での自浄作用を高めることや、水田内での灌漑用水の滞留時間を長くするための水管理方式を検討していくことが必要である。
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