穀物乾燥施設で乾燥処理された米の評価は必ずしも高くない。その原因の一つとしてサイロで貯蔵中の籾が予想以上に熱負荷を受けることが考えられる。 そこで、モデルサイロを製作し、経時的に穀温を計測し籾にかかる熱負荷をとらえ、計算によって実際のサイロの状況を把握した。その結果、サイロ表面は気温よりもかなり温度が高くなり、サイロ壁を通って内部に大量の熱が侵入することが明らかとなった。そのため表面の温度上昇をできる限り抑制するための方策として、i)サイロ壁に水を流すいわゆる濡れ壁として水分蒸発により気化熱を奪う方法、ii)壁面にアルミシートを被覆して日射を反射する方法、iii)壁面に断熱材を被覆して熱を遮断する方法について実験により検討した。 1.高さ方向には穀温に差はなく熱移動はほとんどないものと見られる。 2.表面が無処理のサイロにおいては日射により壁面温度が気温より20℃高くなる場合も見られる。 3.アルミシート被覆と濡れ壁の場合、壁面温度はほぼ気温程度に抑制することができる。 4.穀温が低い場合、断熱材被覆により壁面温度は日射を受けても気温より低くなる。ただし、夜は温度の低下が妨げられる。 5.アルミシートと断熱材被覆の場合、サイロの方位による温度差を解消する効果がある。 6.サイロ内の任意の位置での穀温は、壁面温度を境界条件として熱伝導方程式で精度よく求めることができる。 7.実際のサイロを想定して経時的に穀温を計算した。その結果、アルミシート被覆が最も低温度で推移することがわかった。 8.積算温度を求めて10ヶ月間の籾の品質劣化を検討した結果、サイロの外縁部の籾については、アルミシート被覆は無処理に比べて脂肪酸度が約9mg-KOH/100g・grain低く抑制できることが明らかとなった。
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