4基の非円形クローラ型走行装置を駆使し、走行駆動と同時にクローラ全体を回転・揺動させ車体の地上高を変え、段差・障害のある不整地での走破を可能にする車両の開発を目指している。路面凹凸に関わりなく左右輪の常時接地と車体の水平維持を確保する目的で、左右クローラ揺動軸間に差動装置を導入する機構を採用したが、従来の長円形型クローラを使用すると差動時に左右輪接地反力に差が生じ、車体がローリングを起す欠陥がある。左右クローラ相互が互いに逆方向に差動しても駆動軸と接地点間の水平距離が変化しないクローラ形状を検討すること、差動しても接地点が常に一定となるクローラシステム機構を考察・設計すること及び模型実験により障害乗越え時の左右クローラ接地反力の差を測定・検証することが本年度の課題である。得られた知見を以下に述べる。1.クローラの幾何学的軌跡(履帯で構成される外輪軌跡)のみで互いに逆方向に差動する左右クローラの駆動軸と接地点間の水平距離を常時完全に一致させることは因難である。差動時の左右輪軌跡及び幾何学的計算法から2種類の特殊形状クローラを設計し実験に供した結果、クローラの初期傾き角θ_0と差動角△θの範囲をある程度限定(例えば±40゚)すれば、従来の長円形型クローラ使用時に比べ差動時の左右クローラ接地反力の差を1/2以下に減少させることは可能であった。2.左右クローラ駆動軸をクランク型とし、更に副軸を設け平行リンク機構を活用することにより、差動時の左右クローラ接地点を常に駆動軸直下に置くことが出来る。この際、クローラ長(駆動・遊動スプロケット軸間距離)と等しいクランクアーム長が必要となり実機製作上問題点はあるが、模型による挙動検証から差動時の左右クローラ接地反力が常に等しくなることが実証された。3.車体の水平制御を行なうためには、4基クローラ中の少なくとも1基を独立制御する必要がある。
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