研究概要 |
本年度は科研費補助金の最終年度として、(1)製作ずみの油圧駆動系試作車両について、障害乗越え等Off-roadでの走行テストを行い、現状での走行機能と問題点を明確にする、(2)昨年度に引き続き、左右クローラ相互が互いに逆方向に差動しても駆動軸と接地点間の水平距離が変化しないクローラ形状を検討・改良し、数値解析と模型実験によりその挙動を検証する、(3)特にクローラ型に限らず走行装置全体の機構を重視した、上記と同じ機能を果す車両を開発、その模型車両を試作する、の3点を主な課題として取組んだ。得られた知見を以下に述べる。 1.(1)で、左右クローラの接地点間に高低差が生じない様な地形(段差、溝の乗越え)では、前後の2揺動軸を差動させて走行できるが、左・右いずれか一方の前後クローラが同時に障害に乗上げ又は乗下げると、車体はローリングを起す。そのため、4基クローラ中の少なくとも1基の揺動軸を地形の変動に沿って独立制御する必要がある。但し、本機の特徴である差動装置の利用は、制御対象の数を減らし、その制御系を簡素化する上で極めて効果が認られる。2.昨年度も述べた通り、クローラの履帯で構成される外輪軌跡のみの工夫で、互いに逆方向に差動する左右クローラの駆動軸と接地点間の水平距離を常時完全に一致させることは困難である。クローラの初期傾き角θ_0と差動角Δθの範囲をある程度限定(例えばθ_0=30〜40゚,Δθ=±20゚)すれば、従来の長円形型クローラに比べ差動時の左右クローラ接地反力の差を2/3〜1/2に減少させることは可能であった。3.差動装置とリニアスライド軸受を活用し、4輪が路面の凹凸によって上下動しても接地点が移動せず、差動装置を介した左右両軸に作用するモーメントが常に一定となる走行装置の機構を考案し、車輪型の模型車両を製作した。この場合も上記同様、4輪中の少なくとも1輪の揺動軸を地形の変動に沿って独立制御する必要があり、走行テストでは良好な結果を得た。
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