研究概要 |
1.4基の非円形クローラ型走行装置を駆使し、走行駆動と同時にクローラ全体を回転・揺動させ車体の地上高を変え、段差・障害のある不整地での走破を可能にする車両の開発を目的とし、油圧駆動系の試作車両を設計・製作した。左右クローラの揺動軸を差動装置で連結する機構を採用したが、(1)路面凸凹に関わりなく全4輪を常時接地させることができる、(2)左右クローラの接地点間に高低差が生じない様な地形(段差、溝の乗越え)では、前後の2揺動軸を差動させて走行できる、(3)車体の水平制御を考える場合、その制御対象の数を減らし制御系を簡素化する上で効果がある、等多くの利点が認られた。しかし、前後にある2本の揺動軸を共に差動させると、一般には左右輪接地反力間に差が生じ、対象地形によっては車体がローリングを起す欠陥があり、4基中の少なくとも1基クローラの揺動軸を地形の変動に沿って独立制御する必要がある。2.左右クローラ相互が互いに逆方向に差動しても駆動軸と接地点間の水平距離が変化しないクローラの形状を改良・設計し、数値解析シミュレーションと模型実験によりその挙動を検証した結果、クローラの初期傾き角rheta_0と差動角DELTArhetaの範囲をある程度限定(例えばrheta_0=30〜40゚,DELTArheta=±20゚)すれば、従来の長円形型クローラに比べ差動時の左右クローラ接地反力の差を2/3〜1/2に減少させることは可能であった。しかし、クローラ外輪軌跡のみの工夫で、上記の水平距離を常時完全に一致させることは困難であった。3.差動装置とリニアスライド軸受を活用し、4輪が路面の凹凸によって上下動しても接地点が移動せず、差動装置を介した左右両軸に作用するモーメントが常に一定となる走行装置の機構を考案し、車輪型の模型車両を製作した。この場合も上述同様、4輪中の少なくとも1輪の揺動軸を地形の変動に沿って独立制御する必然性はあるが、走行テストでは良好な結果を得た。
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