加塩加熱型食肉加工品は、材料となる生肉が塩漬工程を経ることで加熱による良好なゲル形成を示すことが知られている。これは塩漬中の低温、高塩濃度条件により、筋肉中の筋原線維タンパク質(m yosin、actom yosin等)が細胞外に流出し、加熱時に網目構造を形成することに由来している。この加熱ゲル形成能はm yosinを主因子として、actinが補助する役割を担っている。故に、加塩された食肉の示す加熱ゲル形成能は塩漬中のm yosinやactinの安定性に依存する。しかし、m yosinに比べactinの塩漬中の変化を調べた研究は少ない。 我々は、DNase I阻害法を用いた低温、高塩濃度下のactinの不安定化要因についての一連の研究を行った。その結果、平成5年度は、高塩濃度、低温ATP非存在下ではアクチン溶液中のF-とG-アクチンとの間には平衡が成立しておらず、F-アクチン-->G-アクチン-->変性アクチンへの不可逆的逐次反応が進行することが明らかにした。また、ATPはG-アクチンから変性アクチンへの過程を抑制すること、少量のHMMはF-アクチンからG-アクチンへの脱重合を促進することを動力学的に解明した。また、m yosinB複合体中のtropom yosinがactinの安定化に関与していることを明らかにした。平成6年度は、F-actin、tropom yosinおよびactinの不安定化要因でもあるHMMが共存するときのactinの性状に及ぼすtropom yosinの影響について詳しく検討し、トロポミオシンのアクチン安定化効果は、トロポミオシンがアクチンフィラメントから解離しない低塩濃度条件下のみ認められることを明らかになった。
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