研究概要 |
まず,リンパ球の増殖や分化を調節する成分としては,Bリンパ球に対して牛乳k-カゼインを,Tリンパ球に対して鶏卵白アビジンを同定した。牛乳k-カゼインはマウス脾臓および兎パイエル板Bリンパ球の幼若化,増殖,抗体産生細胞への分化を抑制し,鶏卵白アビジンはマウス脾臓および兎パイエル板サプレッサーTリンパ球の増殖を抑制した。両蛋白質上の活性発現部位を調べたところ,k-カゼインはシアリダーゼやキモトリプシン処理により,アビジンはマンノシダーゼやペプシン処理により,抑制活性が顕著に低下し,両蛋白質共に分子内の糖鎖と糖鎖間のペプチド結合が重要であることが示された。さらに,両蛋白質の作用による細胞レベルでの抑制機構について調べたところ,k-カゼインはマクロファージに作用し,マクロファージにインターロイキン-1レセプターアンタゴニストを生産させ,それがB-リンパ球の増殖に必要なインターロイキン1の生産やその作用を抑性することにより増殖抑制を示すことが明らかになった。また,アビジンはT-リンパ球上へのインターロイキン-2レセプターの発現を阻害することにより増殖抑制を起こすことが示された。なお,これらの結果は,k-カゼインは抗体生産に対して抑制的に,アビジンは抗体生産に対して促進的に作用することを示すもので,前者は乳児の経口免疫寛容と,後者は鶏卵の高いアレルゲン活性と関係していることが示唆された。 一方,マクロファージに対する作用では,牛乳β-カゼインとα-ラクトアルブミンがマウス腹腔マクロファージの活性化を促進し,牛乳αs_1-カゼイン,k-カゼイン,IgGおよびラクトフェリンが抑制することが示された。さらに,モルモットへの受身皮膚アナフィラキシー反応に対して牛乳k-カゼインとラクトフェリンは抑制作用を示すことが明らかになった。なお,これらの作用機構については現在検討中である。
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