研究概要 |
リンパ球の増殖や分化,マクロファージの活性化および受身皮膚アナフィラキシ-反応を指標に,牛乳や鳥類卵を対象にそれらの修飾成分の同定と作用メカニズムの解析を目的として,平成5年度に引き続いて実験を行った。得られた実績の概要は以下の通りである。 牛乳κ-カゼイン,ラクトフェリンは肥満細胞からの化学情報伝達物質の遊離を抑制することにより,抗アナフィラキシ-活性を有する。また,ラクトフェリンはペプシン消化することにより,未消化ラクトフェリンの場合とは異なった機構で作用する抗アナフィラキシ-成分を生じる。なお,これらの成分はいずれもIII型やIV型アレルギーの抑制は行わない。 また、牛乳αS_1-カゼインとκ-カゼインはマクロファージの活性化を抑制しβ-カゼインは促進するが、抑制的に働くαS_1-カゼイン,κ-カゼインおよびカゼイン由来の抑制ペプチドはすべてマクロファージに結合し,促進的に作用するβ-カゼインやそれ由来の促進ペプチドはマクロファージに結合しない。 一方,ウズラ卵オボアルブミン,オボトランスフェリン,オボインヒビターおよびリゾチームはTリンパ球やBリンパ球の増殖抑制作用を有しており,ウズラ卵オボトランスフェリンの抑制作用はリンパ球に特異的な細胞障害性とリンパ球増殖抑制成分の誘導による。また,ウズラ卵オボインヒビターのリンパ球増殖抑制作用はリンパ球増殖抑制因子の誘導により,ウズラ卵オボアルブミンとリゾチームのそれはマクロファージを介して生じている。
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