家畜排泄物コンポストによる種子発芽阻害の機構を解析し、阻害作用の軽減対策を検討した。 1.家畜排泄物コンポストの作物生育阻害効果は検定植物や指標間で異なり、単一の植物種の特定の指標で一般的な阻害活性を判定することは困難であった。その主たる理由は、コンポスト中の生育阻害成分が多様であり、個々の成分に対する植物種の感受性や阻害機構が異なるためである。 2.家畜排泄物コンポスト類の種子発芽阻害成分として、ミリスチン酸などの数種の長鎖脂肪酸類、安息香酸などの数種のフェノール酸類・ジクロロフェノール酸など4種の塩素化フェノール酸類を分離同定した。 3.ソルガムの種子発芽は、コンポスト中の長鎖脂肪酸類により最も強く阻害された。その阻害機構は、ミリスチン酸、ステアリン酸などの脂肪酸が発芽初期過程の酸化的リン酸化作用とアミラーゼ生合成を阻害し、代謝活性と種子内の水ポテンシャルの低下を抑制して生理的水吸収を減少させ、発芽を抑制するものであると結論した。長鎖脂肪酸類は他の種子発芽も抑制するので家畜排泄物コンポストの主要発芽阻害物質であると考えられた。 4.塩素化フェノール酸類は、シロクローバなどの一部の植物種の発芽を選択的かつ非常に強く阻害した。これらの化合物は原材料中には見出だされず、発酵過程で生成し、蓄積したものと考えられた。これらの種子発芽阻害機構は今後の検討課題である。 5.コンポスト中の種子発芽阻害成分の起源、生成過程は阻害成分の種類によって大きく異なっていた。一般に原材料の腐熟化の過程で阻害成分が減少するものの、発酵過程で生成蓄積するものもあり、阻害成分ごとに軽減対策を講じることが必要である。
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