めん羊ルーメンと豚大腸におけるメタン菌と硫酸還元菌数を測定したところルーメンではメタン菌が優占的水素利用菌であり、一方豚大腸では硫酸還元菌が、その地位にあることがわかった(本研究平成5年度報告)。しかし、その理由がわからなかったので、平成6年度にひきつづいて検討した。 まず、消化管内容物の硫酸イオン濃度を測定した。めん羊ルーメンでは、給餌後1時間で最大値であった。1mMを示し、その後緩やかに減少し始め4〜6時間後には検出限界してFになった。一方、豚育腸内容物の硫酸イオンは、最大値5mMを示し、濃度もめん羊ルーメンより一貫して高く推移した。インピトロでは、少くとも15mM程度の硫酸イオンがないと、硫酸還元菌は、電子伝達で成育しないので、めん羊ルーメンは硫酸イオン濃度が低すぎることが理由のひとつと思われた。そこで、人為的に硫酸イオン濃度を増加地、メンタン生成と硫酸還元の間の電子利用率の差が変化するかどうか調べた。その結果硫酸イオンを10mMまで増加させると硫酸還元による電子処理が増加することがわかった。このとき、メタン生成による電子処理理由は、減少した。20mMまで硫酸イオン濃度を増加させると、全体の8から12%の電子が硫酸還元によって処理されるようになった。しかし、活性汚泥などの例では、硫酸イオンが20mMまで増加すると半分以上の電子が硫酸還元によって処理されており、ルーメンは、他にあまり例のない特殊な環境であることがわかった。ルーメンでは、水素生成菌とメタン菌が、かなり強固な共生関係を形成しており、硫酸還元菌では、それをおきかえることがむつかしいものと推測された。
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