研究概要 |
肥育進度の異なったホルスタイン種去勢牛を用いてインスリンの日内変動とプロピオン酸負荷時のインスリン分泌反応を調べ,これらの結果と増体成績との関係を検討した。肥育前期牛4頭(平均体重350kg),肥育後期牛3頭(630kg),仕上げ期牛3頭(733kg)の計10頭のホルスタイン種去勢牛を用いた。血漿インスリン濃度の日内変動の調査のために,給餌後1時間まで20分毎に,それ以降1時間毎に24時間採血を行った。プロピオン酸負荷試験ではプロピオン酸(0.625mmol/kgBW)負荷前15分から負荷後120分まで経時的に採血した。得られた血液は血漿を分離し,分析まで凍結保存した。分析はインスリン(INS),血糖値(GLU)及び遊離脂肪酸(NEFA)について行った。1.INSの日平均値は肥育前期牛が低く,肥育後期牛及び仕上げ期牛が高かった。INSの日内変動は,各期とも同様で,朝の採食前に低く,夕方の採食後高かった。2.GLUの日内変動は,各期とも採食後低下した後増加する傾向を示した。3.NEFAの日内変動では,各期とも朝の採食前に高く,採食後低下する傾向を示した。4.プロピオン酸負荷時には,各期ともINSが有意に増加したが,その増加の程度は各肥育期で異なり,投与5〜15分では肥育前期牛が73μU/mlであったのに対して肥育後期牛が190μU/ml,仕上げ期牛が157μU/mlと肥育前期牛が低かった。プロピオン酸負荷前のINSの基礎値は,仕上げ期牛が高く,肥育前期牛が低かった。プロピオン酸負荷後60〜120分のINSは,仕上げ期牛が高い値であった。5.増体成績とINSの日内変動及びプロピオン酸負荷時のINSの分泌反応との間には明かな関係が認められなかった。以上のことから,ホルスタイン種去勢牛では,肥育に伴いインスリンの基礎値が増加するが,この増加と増体成績との関連は少なく,体重700kg以上の仕上げ期にはインスリンの分泌動態が変化すると推察された。今後,肉質とインスリン分泌動態との関連を検討する。
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