研究概要 |
肥育を終了したホルスタイン種去勢肥育牛を用いてインスリンの日内変動とプロピオン酸負荷時のインスリン分泌反応を調べ,これらの結果と屠肉性との関係を検討した。ホルスタイン種去勢肥育牛12頭(平均体重604kg)を用いて,21および25ヵ月齢時の血漿インスリン濃度の日内変動と解体成績との関係を,ホルスタイン種去勢牛13頭を用いてプロピオン酸負荷試験後のインスリン分泌反応と屠肉性との関係を検討した。 負荷試験ではプロピオン酸(0.625mmol/kgBW)負荷前30分から負荷後120分まで経時的に採血した。得られた血液は血漿を分離し、分析まで凍結保存した。分析はインスリン(INS),血糖値(GLU)及び遊離脂肪酸(NEFA)について行った。1.INSの日内変動と屠肉性との関係では25ヵ月齢での夕方給餌後8時間のINSとトリミング脂肪割合との相関は正の傾向を示した。2.25ヵ月齢での夕方給餌後8時間のINSとリブロース胸最長筋の水分含含有率とは負の,粗脂肪含有率とは正の相関の傾向がみられた。3.脂肪交雑等級「3」の牛は,「2」の牛よりも血漿インスリン濃度が高い傾向を示し,INSの日内変動において,脂肪交雑等級「3」の牛は「2」の牛より最高値,最低値の両値とも高い傾向を示した。4.プロピオン酸負荷後のINS濃度と屠肉性との関係を検討した結果,INS濃度は屠殺前体重および枝肉重量と正の相関の傾向を示し,リブロース胸最長筋の粗脂肪含有率および脂肪交雑等級とは負の相関の傾向を示した。以上のことから,肉用牛の体重の増加に伴って血漿インスリン濃度が増加し,プロピオン酸負荷後のインスリン分泌反応が大きくなるが,屠肉性との関係では,インスリンの日内変動と蓄積脂肪量との関係が深く,プロピオン酸負荷後のインスリン分泌反応は枝肉重量などの肉量と関係が深いことが推察された。また,ホルスタイン種去勢肥育牛では肉質が狭い範囲に分布するために,血漿インスリン濃度と産肉性能との関係の解析は肉質が広い範囲で分布する黒毛和種などの肉専用種を用いた研究が必要であると考えらた。
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