遺伝子導入技術を家畜に応用していくにあたり、トランスジェニック(Tg)家畜の生産効率が、著しく低いことが大きな障壁となっている。その要因の一つが、DNAの挿入効率そのものが家畜胚では著しく低いことである。(1)胚を移植する前にTg胚を効率良く選別する手段を開発するために幾つかの方法についてマウス胚を用いて実験を行った。注入した遺伝子DNAの宿主DNA内への挿入率を、着床前胚の段階でPCRにより解析できる方法を確立する目的で、PCR用プライマには、導入遺伝子の3'末端近くの領域とランダムプライマーとを用いて検討した結果、Tg胚を選別する手段として、有効であるものの、精度を高めるには更に検討が必要であることが判明した一方、プロテアーゼK、DpnI、Bal 31を用いた方法によりTg胚を選別した結果、極めて有効であることが判明した。(2)受精卵の核内に注入したDNAが宿主DNA挿入される効率を上げる目的で、マウス胚を用い、超微量の制限酵素を核内に注入し、宿主DNAの切断と再結合の頻度を高め、外来DNAの宿主DNA内への挿入効率を上げる目的で、異なった酵素量を受精卵の前核に注入し、その後の体外培養下での発生能について調べた。制限酵素を10IUから10^<-4>IUまでの濃度を8段階に稀釈して受精卵の核内に注入したところ、10IUの0%から10^<-4>IUの69.8%に至る注入卵がぼぼ稀釈段階に対応した割合で胚盤胞に発達することが確認された。注入する制限酵素量は10^<-1.5>IUと10IU^<-2>が有効であることが判明したので、これらの酵素量に限定し遺伝しDNAの挿入効率を検討する計画である。(3)形質転換牛作出の基礎研究としてウシ屠体卵巣卵子を用いた、体外成熟、体外受精及び体外発育には、体外受精に用いる凍結精液作製時の稀釈液の種類ならびに種雄牛が大きく影響することが判明した。
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