[研究目的] 本研究の目的は、平成5年度において、まず、酵素的DNA増幅法(Polymerase Chain Reaction法、以下PCR法と略す)に従って鶏GLPをコードするDNAを増幅し、つぎに、この増幅されたDNAを用い酵母を宿主として生理活性を有するGLPを大量に生合成する。そして、生合成されたGLPに対する単クローン抗体を作製する。さらに、平成6年度において、作製された単クローン抗体をアフィニティークロマトグラフィーのリガンドに供することにより、鶏膵臓からのGLPの単離・同定を行う。また、平成5年度生合成されたGLPを用いて、鶏におけるGLPの生理機能についてin vivo並びにin vitro条件下でグルカゴンのそれと比較検討する。 [研究成果] 1)PCR法を用いた鶏GLPをコードするDNAの合成:鶏グルカゴン前駆体cDNA内のGLPをコードする塩基配列に基づいて化学合成された20merのプローブを用い、PCR法に従ってGLPをコードするDNAを大量に得た。2)酵母による鶏GLPの発現:まず、1)で得たGLPをコードするDNAをシャトルベクターpAM82(大腸菌と酵母の双方で増幅可能で、しかもPHO5プロモーターなどを有することから酵母での強力な蛋白質発現能をもつベクター)に組み込み、大腸菌JM109で増幅した。つぎに、増幅された組み換えベクターを用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae AH22株を宿主としてGLPを大量に発現させた。最後に、発現されたGLPを常法に従って分離・精製後、そのアミノ酸配列並びに生理活性を確認した。3)鶏GLPの単クローン抗体の作製:上記2)で得たGLPで免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞(P3U1)を常法に従って融合し、得られたハイブリドーマよりGLPに特異的な単クローン抗体を作製した。4)鶏膵臓からのGLPの単離・同定:上記3)で得た単クローン抗体をリガントとしCNBr-活性化セファロース4Bを担体としたアフィニティークロマトグラフィー等を利用して、GLPを鶏膵臓から単離し同定した。5)鶏GLPの生理機能の検討:上記2)で得たGLPを用いて、成長中の鶏に関して、静脈内投与によるin vivo実験並びに初代培養肝臓細胞及び遊離脂肪細胞を利用したin vitro実験を行ない、鶏の体内代謝系、即ち、炭水化物代謝系・脂質代謝系および蛋白質代謝系へのGLPの関与をグルカゴンのそれと比較検討した。
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