研究課題
若齢および老齢のBDF1マウスを用い、以下の3点について検討した。(1)加齢に伴う精巣組織の微細形態変化とFSHホルモンレベルの変化との対応(2)セルトリ細胞内細胞骨格系の加齢変化(3)BrdU取り込み試験による老化精巣における精祖細胞分裂能の若齢個体との比較(1)12ヶ月齢までは精巣組織中に変化は全く認められなかった。18ケ月齢になると精上皮内に空胞が出現を始め、これは月齢の進行と共に増大した。一方、12ヶ月齢まで変化のなかったFSHレベルは18ヶ月齢で低下を始め、その後直線状にゆるやかに減少し、33ヶ月齢では3ヶ月齢の55%にまで低下した。18ヶ月齢で始まった精巣組織の退行性変化はFSHレベルの低下と対応して進行し、27ヶ月齢以降になると薄層化した精上皮が出現を始め、ここではセルトリ細胞が極性を失って扁平化しており、精子細胞がほとんど消失して精子発生が完全に停止していた。このように精子発生不全となった精細管は27ヶ月齢で12.7%、30ヶ月齢で39.7%、さらに33ヶ月齢では63.0%に達した。また、間質の変化として24ケ月齢よりPAS陽性物質が出現し、27ヶ月齢に至るとPAS陽性の細胞外物質も現れ、これらは月齢の進行とともに増大した。間質域のライディッヒ細胞内には24カ月齢より渦巻状の滑面小胞体が出現し、この構造は加齢に伴い増加した。(2)若齢個体のセルトリ細胞中には認められなかった中間径フィラメントのサイトケラチンが30ヶ月齢以降の個体で出現した。また、微小管およびアクチンフィラメントの分布は老齢個体では精細管管腔側で増加するという現象が見られた。これらの変化はセルトリ細胞の扁平化および機能低下と関わっていると考えられる。(3)Brduの取り込みは精祖細胞のみに観察された。単位面積当りの全精祖細胞数は3ヶ月齢を100%とすると、12ヶ月齢で83.3%、24ヶ月齢で73.0%、33ヶ月齢で63.1%であり、Brduの取り込みが見られた精祖細胞数を同様に計測すると、月齢順に100%、70、6%、60、4%および40、5%であった。以上の結果から、単位面積当りの全精祖細胞数のBrdu取り込み率を比較すると、3ヶ月齢41.0%、12ヶ月齢34.7%、24ヶ月齢33.9%、33ヶ月齢26.4%となった。このことから加齢に伴い、精祖細胞は明かな分裂能の低下を示したことになる。
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