骨髄骨は産卵期の雌鳥の骨髄腔に発達し、卵殻形成のためのカルシウムの貯蔵所としての機能を有している。この骨髄骨の形成はエストロジェンとアンドロジェンによって誘発される可能性がある。本研究では、骨髄骨に出現する骨形成細胞を分離・培養することを試みて、この骨形成細胞がエストロジェンとアンドロジェンの刺激によって実際に増殖・分化し、骨形成能を有しているかどうかを調べた。 産卵鶏骨髄骨をコラゲナーゼ処理し、培養皿に付着する性質を利用して、骨髄骨表面の細胞を分離した。これらの分離された細胞はアルカリホスファターゼ(ALP)陽性であったことから、骨形成細胞であることが確認された。次に10^<-9>、10^<-8>および10^<-7>Mのエストロジェン(βエストラジオール)と10^<-9>、10^<-8>および10^<-7>Mのアンドロジェンをそれぞれ単独に添加したBGJb培地で、分離された細胞を144時間培養したところ、10^<-8>Mエストロジェンおよび10^<-7>Mのアンドロジェンをそれぞれ含む培地において、ALP陽性骨形成細胞が最も増加した。このことから、10^<-8>Mのエストロジェンと10^<-7>Mのアンドロジェンを同時に添加したBGJb培地で培養した結果、ALP陽性骨形成細胞の増殖が著しかった。また、10^<-8>Mのエストロジェンと10^<-7>Mのアンドロジェンをそれぞれ単独もしくは同時に添加して3週間培養したところ、エストロジェンとアンドロジェンを同時に添加した培地で培養した骨形成細胞は重層状に観察され、その周囲にAlcian blue陽性、Collagen type I免疫染色陽性の基質形成がみられ、しかもこれらの基質はvon Kossa染色陽性でカルシウムが沈着していることが確認された。以上のことから、骨髄骨の骨形成細胞はエストロジェンとアンドロジェンの単独作用によるよりも、むしろ両ホルモンの協調作用によって増殖および分化が活発化し、最終的には骨形成能を獲得することが窺えた。
|