研究概要 |
クラミジアは家畜・愛玩動物をはじめ人を含む幅広い宿主域を有し,これら感染動物に不顕性感染から致死性全身感染まで様々な病原性を発揮する.しかしながら,その病原性発現の機構は未だ不明である.今回,我々は鳥由来および哺乳動物由来C.psittaciとC.pecorumのgroELの構造を比較し,また,生物学的性状との関係を明らかにしようとしている.今年度は各種株間の構造を比較するためPCR法によりgroEL断片を増幅し,制限酵素切断像および塩基配列解読による比較を行った. GroELの遺伝子をクローニングするためC.trachomatis,C.pneumoniaeおよびモルモットC.psittaciのgroEL塩基配列を比較しPCR用のプライマーを設計した.このプライマーを用いPCRを実施したところ猫由来C.psittaciのgroELを増幅できたが、他の鳥由来C.psittaciおよびC.pecorumのgroELを増幅できなかった.そこで,条件をより緩やかにしたところ鳥由来C.psittaciのgroELを増幅することができた.しかし,C.pecorum groELは増幅できなかった.この結果はgroELの構造に種間で違いがあること,また,猫由来C.psittaci groELはモルモット由来C.psittaci groELと類似した塩基配列を有することを示唆した.増幅産物について制限酵素切断像を比較したところ,以前の我々の染色体DNAの結果とよく一致した.さらに猫由来C.psittaci groELでは株間に差がみられた.この猫由来株は主要外膜蛋白質遺伝子の解析では差がみられなかったものである. 鳥由来C.psittaci groELの塩基配列解読ではこれまでに報告されているC.trachomatis,C.pneumoniaeおよびモルモット由来C.psittaci groELと塩基レベルで違いが見つけられた. 現在,塩基配列解読を進めており,増幅できなかったC.pecorum groELについても遺伝子ライブラリーからのクローニングも含め構造解析を行っている. これらの研究結果は平成6年度クラミジア研究会および第8回国際クラミジア感染症シンポジウムで発表する予定である.
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