ソマトスタチン(SS)は視床下部から抽出されたアミノ酸14残基をもつペプチドであり、神経組織のみならず、多くの内分泌細胞にも含有される。SS-14のN端に更にアミノ酸14残基がついたSS-28は動物界に広く存在し、両者は同一の前駆体に起こるとされる。実験的にはSS-28の切断でSS-14が生ずるが、SS-28が最終産物であるという見解もある。魚類でSS-28含有D細胞は膵島A細胞に、SS-14含有D細胞は膵島B細胞に接近し、ラットではSS-28がSS-14より強くインシュリンを抑制し、SS-14がグルカゴンをより強く抑制するという。そこで鶏のA島とB島を構成するD細胞に含まれるSSに相違があるかを免疫組織化学的に同定することが本研究の主目的である。 材料及び方法 鶏を含め数種の鳥類、カモシカ他、数種の哺乳類の膵臓と副腎をパラフォルムアルデヒド系固定液で固定し、パラプラストに包埋し、4μmの連続切片とし、ABC法により免疫組織化学的染色を行った。用いた抗体は合計で6種類であるが、その中からSS-14とSS-28[1-28]の2種類の抗体を、SS-14とSS-28[1-14]の2種類の抗原を用いて8通りの組合せによる吸収試験を前もって行った。 結果と考察 鶏の膵島D細胞、腸管D細胞及び副腎のA細胞は共にSS-14抗体とSS-28[15-28]抗体には陽性の免疫反応を示すが、SS-28[1-14]には免疫陽性反応を示さない。比較のために用いた、ガチョウ、カラスそしてダチョウの膵島D細胞も全てSS-28[1-14]抗体には陰性であった。一方哺乳類ではスンクス、カモシカそしてネコの膵臓D細胞はSS-14とSS-28[1-14]を共に含有し、ネコ、ヤギの副腎髄質細胞もSS-14とSS-28[1-14]を含有していた。結論として、少なくとも用いた鳥類の膵島D細胞と副腎髄質A細胞はSS-14のみを含むといえる。従ってソマトスタチンについて、鳥類は系統発生上特異な位置を占めているといえよう。
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