腎臓、肝臓、骨格筋などから摘出した新鮮組織標本を急速凍結後、クリオスタットを用いて未固定組織切片とし、組織切片に存在する細胞間マトリックス(ECM)、速収縮ミオシンなどの生理学的に重要な物質を、その局在を保ちつつ高感度に検出・定量できる免疫組織化学的微量定量法を新たに確立した。すなわち、未固定凍結組織切片に存在する抗原(生理学的に重要な物質)の抗原性を失わないように-80℃の冷アセトン中にて短時間固定後、この組織切片を酵素免疫化学的定量法における抗原プレコーティングウェルと見なして1次抗体と反応させた。次いで、ペルオキシダーゼ(HRP)標識2次抗体と反応させた後、HRP活性を求め、続いて、色素法にて総蛋白量を求めた。これらから組織切片における抗原量/総蛋白量を算出した。 実際に、免疫性および薬物性腎疾患モデルを作製し、病変にともなう腎皮質組織におけるECM蓄積の推移を免疫組織化学的に観察するとともに、免疫組織化学的微量定量法にて病態を定量解析する方法を確立した(国際生理科学会、英国、1993;論文、1994)。次いで、この方法がヒト臨床において有用であることを実証した。すなわち、慢性非A非B型肝炎患者にインターフェロンαを投与した時、肝線の維症進行が阻止されることを世界に先駆けて明らかとした(論文、1994)。また、骨格筋におけるECMや速収縮ミオシンの免疫組織化学的微量定量法をも完成させた(論文、1994)。
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