サイトカインは動物の免疫応答調節因子として重要な役割を担っている。しかし魚類においては、それら免疫応答を調節するサイトカインの性状ならびに防御免疫における役割と意義はほとんど不明である。そこで今回、ニジマスを用いて血清中の造血幹細胞増殖刺激因子(主としてM-CSF)の存在を検討し、また、ニジマスマクロファージの性状を解析した。頭腎細胞をニジマス血清存在下で軟寒天中で培養すると、マクロファージからなる細胞のコロニーが形成された。LPS、フロインド完全アジュバント、あるいはMDPを接種した魚の血清を培養に加えると、コロニー形成は促進された。これらの結果より、ニジマスにおけるM-CSF様因子の存在が示された。一方、頭腎マクロファージをボツリヌスC_2毒素処理すると、アクチンのADPリボシル化が起こるとともに、マクロファージの食作用が阻害された。この結果より、他の脊椎動物同様、魚類の非筋肉性アクチンもボツリヌス毒素に感受性をもつことが示された。 一方、血液中に存在するCRPその他の急性期蛋白質は、感染防御免疫および生理機能維持に重要な役割を担っている。しかし、宿主の免疫応答調節における役割は必ずしも明らかではないことから、ニジマス急性期蛋白質による免疫応答調節機構を検討した。ニジマス血清からCRPおよびSAPを分離し、アミノ酸配列を解析した。その結果、既知のCRPおよびSAPを相同性を有することが明らかとなった。また、電子顕微鏡による観察で、ペントラキシン類の5角形の結合構造が認められた。炎症を誘導したニジマスから得た血清の蛋白質成分の変動を解析した結果、CRPおよび43KDの中性蛋白質が増加した。
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