消化管ホルモンであるグルカゴンとヒスタミンの肝小葉内門脈域実質細胞と中心静脈域実質細胞の糖代謝に対する効果を検討した。 室温飼育ラットの肝臓ではグルカゴンはグリコーゲン分解および糖新生の速度をを門脈域と中心静脈域細胞の何れにおいても3および2倍にそれぞれ促進した。ヒスタミンはそれ自身では糖代謝に効果を発揮しなかったが、グルカゴンの効果を増強した。このヒスタミンの効果も門脈域と中心静脈域細胞で差はなったか。寒冷環境に順化したラットでは摂食糧は倍増し、同時に産熱増加のため基質利用速度も増加する。このような動物では室温飼育動物と比べて、グルカゴンの効果は門脈域細胞では3倍にも増強し、逆に中心静脈細胞では50%にまで低下した。ヒスタミンは寒冷順化動物でもそれ自身では効果を発揮せず、グルカゴンの効果に対する増強作用も門脈域細胞では増大し、中心静脈域細胞では減弱していた。以上の成績から、消化管ホルモンであるグルカゴンやヒスタミンは肝糖代謝調節に関与し、これらのホルモンに対する肝実質細胞の反応性は動物の代謝変動時の肝機能変化に際して大きく変化し、かつその変化は肝小葉内の部位により大きく異なることが明らかとなった。
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