研究概要 |
消化管とくに腸の神経叢には多くの種類の神経が多数存在し、機能的にも形態的にも複雑なネットワークを形成し、末梢臓器の神経性調節を調べる上で極めて興味深い。我々は現在までに消化管の抑制性伝達について調べてきた。本年度の研究ではラット回腸,結腸で一酸化窒素が平滑筋への抑制性伝達物質として働いていることを確認し、その作用機序の詳細に迫った。ラットの近位,中部,遠位結腸条片に電気刺激を加えることにより弛緩反応を得て、この反応の伝達物質の検索を行ない、近位部では一酸化窒素であることを薬理学的に証明した。中部結腸では、一酸化窒素が部分的に関与しているが、必ずしも中心的な役割を演じていないこと、サブスタンスPが収縮性の伝達物質として、常に収縮性に働らき逆に作用していることを認めた。一方遠位部では一酸化窒素の関与は認められず、VIPの部分的関与が認められた。次に一酸化窒素の細胞内2次伝達物質について調べた。一酸化窒素や腸神経叢の興奮により平滑筋細胞内にサイクリックGMPが産生されることを確認した。ところが、近位部ではこのサイクリックGMPの増量により弛緩が惹起されるのに、遠位部では同程度のサイクリックGMP量は弛緩を生じないことから、両部位の平滑筋の収縮機構のサイクリックGMPに対する感受性の差異が存在することを見い出した。
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