消化管平滑筋の抑制性伝達と一酸化窒素の役割

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05660350
• 研究機関: 大阪府立大学
• 研究代表者: 畑 文明 大阪府立大学, 農学部, 教授 (60028363)
• キーワード: 一酸化窒素 / 消化管平滑筋 / 消化管抑制性伝達 / 平滑筋弛緩 / サイクリックGMP / ラット結腸 / 平滑筋細胞膜電位

研究概要

前年度までにラット結腸近位部では一酸化窒素が弛緩反応をメディエイトしていること。遠位部では一酸化窒素が関与しないこと。平滑筋細胞では近位、遠位両部位とも神経を経壁電気刺激することにより、細胞内cyclic GMP量は顕著に増加するにもかかわらず遠位部では弛緩に繋がらないことを明らにした。 本年度は近位部での一酸化窒素の作用と、細胞内cyclic GMPと弛緩の関係を調べ以下のような成績を得た。近位部では刺激によりアトロピン不在下でも弛緩反応が得られるが、i.J.Psはアトロピン存在下でしか得られなかった。ニトロアルギニン処置により、弛緩は消失するが、i.j.psは無影響だった。アパミン処置は逆に弛緩に無影響だが、i.j.psを完全に抑制した。外から適用した一酸化窒素は低濃度で弛緩を惹起したが、膜電位にはこの濃度では効果がなく、極めて高濃度で僅かな過分極を生じるのみだった。これらの結果から、ラット近位結腸では一酸化窒素は膜電位に影響せず弛緩を惹起していることが示された。一方、経壁電気刺激による一酸化窒素の増量は遠位部では、平滑筋収縮機構のcyclic GMPに対する感受性が近位部に比べて著しく低いひとが、スキンドフェイバー標本で示された。しかし、cyclic GMPに対して全く反応しない訳ではなかったので、刺激によるNO産生やcyclic GMP増加が比較的弱いひとと両者が併さって遠位部でのNOに対する無反応性が生じている。

研究成果

• [文献書誌] SUTHAMNATPONG,N: "Mediators of nonadnenergic,noncholinergic inhibition in the proximal,middle and distal reglons of rat colon." Brit.J.Pharmacol.,. 108. 348-355 (1993)
• [文献書誌] SUTHAMNATPONG,N: "Dissociation of cyclic GMP level from relaxation of the distal,but not the proximal colon of rats." Japan.J.Pharmacol.62. 387-399 (1993)
• [文献書誌] KANADA,A.: "Neural pathway involved in nitric-oxide-mediated descending nelaxation in rat ileum." Europ.J.Pharmacol.250. 59-66 (1993)
• [文献書誌] SUTHAMNATPONG,N.: "Nitric oxide-mediated inhibitory response of rat prcximal colon:indepedence from changes in membrane potential." Brit.J.Pharwacol.112. 676-682 (1994)
• [文献書誌] MAEHARA,T.: "Ditlereuces in relaxant effects of cyclic GMP on skinned muscle preparations from the proximal and distal colon of rats." Europ.J.Pharmacol.261. 163-170 (1994)