1.Human transforming growth factor alpha(TGFalpha)transgenicマウス(TGFalpha(+))の未経産、妊娠中、分娩当日の乳腺発育をTGFalpha(-)と比較検討した。乳腺の核酸含有量およびDNA合成律速酵素の一つであるthymidine kinase(TK)の活性は、未経産期ではTGFalpha(+)がTGFalpha(-)より高い値を示したが、妊娠中および分娩当日では、群間に差は認められなかった。これらは組織学的検索の結果とよく一致し、妊娠〜分娩当日のマウスの乳腺ではTGFalpha(+)とTGFalpha(-)に違いは見られなかったが4ケ月齢ではTGFalpha(+)の乳腺は同月齢のTGFalpha(-)の乳腺よりも発育が著しく、一部前癌症状が認められた。TGFalpha(+)未経産個体では8ケ月齢までに80%の乳癌発生率を示したのに対し、TGFalpha(-)では同期間中に発癌は見られなかった。RT-PCR法によって2ケ月齢を除くTGFalpha(+)マウス全群でhTGFalphamRNAが検出された。また未経産個体における発情周期の型および血中プロラクチン(PRL)レベルに群間に差は認められなかった。 2.TGFalpha(+)は正常に妊娠、分娩をするが泌乳を行なわない。泌乳開始にとって重要な要因である乳腺のPRLレセプターを測定したところ、TGFalpha(-)では分娩に伴い妊娠末期より5倍の上昇を示したのに対し、TGFalpha(+)ではこの上昇は見られなかった。なお妊娠〜分娩当日における血中PRLレベルには群間に有意の差は認められなかった。 3.雄の乳腺の組織像、DNA合成律速酵素活性においてTGFalpha(+)とTGFalpha(-)の間に違いは見られなかった。またTGFalpha(+)においてもhTGFalpha mRNAは検出されなかった。
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