研究概要 |
本研究は,乳牛の分娩に起因した起立不能症(分娩性低Ca血症)の予防法を確立することを目的として、本年度は牛に陽イオン交換樹脂(樹脂)を投与し、樹脂の投与による生体の酸塩基平衡と無機質とくにCa代謝に及ぼす影響について検討した。 実験には,年齢1,2歳の第一胃フィステルを装着したホルスタイン種去勢牛3頭を用いた。5日間の採食期,各7日間の絶食期および樹脂投与期において血液,第一胃液を採取し、測定に供した。樹脂の投与による主なる結果は、以下のとおりである。 1.血液pHとHCO_3^-濃度は、低下する傾向を示した。 2.血漿K濃度および血漿浸透圧は、低下した。 3.血漿総Ca濃度および血漿1,25(OH)_2D濃度は変化しなかった。しかし,血漿Ca^<++>濃度および血漿Ca^<++>/Caは,上昇する傾向を示した。 4.第一胃液pHは低下した。一方、NaとPi濃度は上昇する傾向を示した。 以上より,前年度の緬羊を用いた実験結果と同様に,樹脂の投与は牛に対しても代謝性アシドーシスを引き起こすことが明らかとなった。すなわち、投与された樹脂は,第一胃内において充分に陽イオンを吸着することが示唆され,樹脂投与の目的である消化管内での陽陰イオンバランスのコントロールが樹脂により可能であることが示された。したがって、これら一連の結果は、今後の起立不能症の予防に新たな方法が導入できる可能性を強く示唆するものと考えられた。
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