研究概要 |
子牛のコクシジウム症発症の要因の一つと考えられる免疫力の低下とセレニウム(Se)およびビタミンEとの関連性を明らかにするために、下痢を発症した哺乳期和牛子牛とその母牛12組の糞便、血液、乳汁を採取し、糞便検査を実施するとともに、血清・乳汁Se濃度、全血グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)活性および血清alpha-トコフェロール濃度の測定を行い、同一農家で飼養され下痢を発症していない対照子牛とその母牛9組との比較を実施した。糞便検査の結果、下痢発症子牛3頭の糞便からコクシジウムオーシスト(OPG>10,000)が検出された。一方対照子牛1頭の糞便からもコクシジウムオーシストが検出されたが、OPGは<10,000であった。下痢発症子牛およびその母牛の血清Se濃度は、対照子牛およびその母牛に比べそれぞれ低い傾向を示したが、有意差は認められなかった。全血GSH-Px活性は、下痢発症子牛で対照子牛より低い傾向を示したが、有意差は認められず、両母牛間でも差は見られなかった。また繁殖用黒毛和種牛の血清Se濃度は、下痢発症子牛の母牛で20.8±5.6(Mean±SD)ng/ml、対照母牛で24.5±6.1ng/mlであり、最近の他の報告と同様に低値であり、牛における欠乏値(<30ng/ml)の範囲にあった。乳汁Se濃度は、両母牛間で差は見られなかった。血清alpha-トコフェロール濃度は、下痢発症子牛で対照子牛に比べて有意に低下し、その母牛においても対照母牛に比べ低い傾向が見られた。以上の結果から、哺乳期における和牛子牛の下痢発症時において、子牛と母牛ともに血清Seおよびalpha-トコフェロール濃度が低い傾向にあることが明らかになった。したがって次年度は、分娩予定1カ月前より母牛にSeまたはビタミンEの投与を行い、分娩後の子牛下痢症に対する予防結果を検討する計画である。
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