生物系廃棄物の代表として、家畜ふん(主に豚ふん)を原料とするコンポスト化を行い、通称1次発酵と言われる最高温度出現までのコンポスト化初期過程における反応、材料物性と微生物活性・繁殖の推移を比較検証した。また、実用規模の施設におけるコンポスト化反応(約3カ月間)のモニタリングを実施した。結果は以下の通りである。 1)生物系廃棄物の代表として使用した家畜ふんの物理性状は、その水分や副資材の種類・混合率によって変化し、コンポスト化反応にとって必要な好気環境を作ると共に温度上昇に係わる熱的性質、特に熱伝導率に影響を与える等、主としてマクロ的現象を支配する。 2)コンポスト化初期において常温域から高温域にわたるサンプリングと平板培養実験の結果、材料温度が55℃未満の常温域で発現する分解速度極大値付近の主役微生物は一般細菌類であり、その細胞数増加と炭酸ガス発生に基づく有機物分解速度の両特性は一致した。即ち、1次ピーク温度を発現させる1回目の好気的分解は主に常温性細菌類の繁殖に起因するとみて良い。 3)高温域で採取した試料を55、66℃で培養した結果、常温域からの叢遷移や最高温度を導く2回目の好気的分解との関連は明確でなかった。これは、実際のコンポスト化での2回目の分解時には、1回目によって栄養基質が消費されていて、本実験では潤沢な栄養培地条件を与えたためと考えられた。そこで、栄養濃度を薄めて制限した培養を行った結果、高温性の細菌や放線菌が認められ、細胞数増加特性も炭酸ガス発生速度変化と定性的に符合するものであった。 4)実用施設でのコンポスト化においては、有機物分解の大部分が1次発酵の30日間に行われ、一方その他の材料物性変化はコンポスト化全期間にわたって緩慢に行われることが分かった。
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