本研究は、リグニン分解性担子菌Pleurotus ostreatusが生産するリグニン分解酵素、マンガン依存性ペルオキシダーゼ(MnP)を研究対象として行い、以下に述べる知見を得た。 1.本酵素の生産条件について検討を行ない、本酵素がMN^<2+>により誘導生産されることを明らかとした。 2.本酵素を均一状態に精製し、精製酵素を用いてMnPの蛋白化学的、酵素化学的諸性質を種々明らかとした。 3.本酵素遺伝子およびcDNAをクローニングし、それらの全塩基配列を決定した。解折の結果、本遺伝子は29アミノ酸残基から成るシグナルペプチドと332アミノ酸残基から成る成熟MnPをコードしていることが明らかとなった。また、本遺伝子には、GT-AGの一般則に従う15個のイントロンが存在した。本遺伝子の5'-非コード領域には、真核生物の遺伝子に特徴的なTATAボックスおよびCAATボックスと推測される配列が各々2箇所存在することが明らかとなった。また、3'-非コード領域には、ポリAシクナルと推測される領域か存在した。さらに、本酵素にはペルオキシダーゼに特徴的な活性部位(disatal-His、distal-Arg、proxomal-His)の存在が認められることや、N-グリコシレーションサイトが一箇所存在することなどが判明した。 4.MnPcDNAを発現ベクターに挿入して得られた組換えベクターを、Saccharomyces cerevisiaeあるいはAspergillus oryzaeに導入したが、活性のあるMnPを生産する形質転換体は得られなかった。しかし、A.oryzaeにおいては、染色体に挿入されたMnPcDNA(サザンブロット解折により確認)がベクター由来のプロモーターの支配下で転写され、MnPmRNAが生産されていることがノーザンプロット解折から判明した。
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