今期は以下のような成果を得た。 1.lonプロテアーゼ欠損株Y1090による組換えδ-内毒素の生産 JM103が生産した組換え型δ-内毒素は、SDS-PAGEの解析結果では分子量が予想された大きさよりも約5kDa小さく、また殺虫活性も認められなかった。大腸菌の細胞内プロテアーゼによる分解の可能性を想定し、プロテアーゼ欠損株であるY1090で本毒素を生産させ、分子量と殺虫活性を検討した。しかし、分子量はJM103の場合と同様であり、殺虫活性も認められなかった。この結果より、毒素の見かけの分子量が小さく見積もられるのは毒素の構造の半分がαヘリクスでできているためであり、また活性が無いのはαヘリクスに富んだ構造が正しく織り込まれないためであろうと推察された。組換え毒素のRefol-dingの技術は抗体と毒素の遺伝子工学的キメラ作製上最も難しい課題の一つになり得ると考えられる。そこで現在、この点について条件を検討している。 2.毒素アッセイ系の構築 カイコ胚由来培養細胞BoMo15Aを用いてキメラ毒素のアッセイ系を構築した。すなわち、まず、毒素の細胞障害活性はホルマザン色素であるMTTで測定できる事を明らかにした。また、BoMo15Aは毒素に対する感受性が低く、本細胞に対して結合性を持つモノクローナル抗体により毒素に新たに活性を付与できたか否かの検定に使用できると考えられた。
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