新規の特異性を付与するのに利用するモノクローナル抗体の作製と、キメラ毒素のアッセイ系の作製および遺伝子工学的毒素の大量生産法を確立し、目的の60%を達成した。詳細は以下の通りである。 1.モノクローナル抗体の作製:(1)カイコの中腸上皮細胞上の膜タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製した。また、in vitroのアッセイ系でカイコ胚由来培養細胞BoMo15Aに対する傷害活性を検討できるようにするため、これらのモノクローナル抗体の中から本培養細胞に結合するものを5種スクリーニングした。(2)δ-内毒素が毒性を発揮するためには本来のレセプターに結合することが必須である場合も想定できる。そこでカイコ中腸上に存在するδ-内毒素のレセプターに対するモノクローナル抗体を作製した。 2.毒素アッセイ系の構築:カイコ胚由来培養細胞BoMo15Aを用いてキメラ毒素のアッセイ系を構築した。すなわち、毒素の細胞障害活性はホルマザン色素であるMTTで測定できる事、また、BoMo15Aは毒素に対する感受性が低く、本細胞に対し結合性を持つモノクローナル抗体により毒素に新たに活性を付与できたか否かの検定に使用できる事を明らかにした。 3.δ-内毒素高発現系の作製:δ-内毒素の活性最小単位とされる領域を遺伝子工学的手法で作製した。すなわち、tacプロモーターをもつ発現ベクターにコガネムシだけに特異的に殺虫活性を持つδ-内毒素の遺伝子をつなぎ、大腸菌Y1090を形質転換して封入体として大量に毒素を生産させることに成功した。 4.今後の課題:抗体遺伝子のクローニング行った後、毒素とのキメラタンパク質として発現させ、これについて上記アッセイ法で活性を検討したい。
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