研究概要 |
ウイルスのDNAポリメラーゼタンパク質(Pol)において一般に認められるアミノ酸保存配列YGDTGに相当する合成オリゴヌクレオチドをプローブとして、BmNPVゲノムからクローニングしたDNA断片3570bpの塩基配列を決定した。この塩基配列は2964bpの読み取り枠(ORF)をもっており、988アミノ酸残基からなる分子量114,650(114.65K)のタンパク質をコードしていることが推定された。このBmNPVのORFは、すでに塩基配列が決定されているAutographa californica NPV (AcMNPV)およびLymantria dispar NPV (LdMNPV)のホモログとアミノ酸配列でそれぞれ96%および45%の類似性をもっていた。また、他の6種の動物ウイルスのpolとは27-28%の類似性があった。BmNPVのこのORFは、α様polファミリーならびにウイルスpolにおいて一般に認められる7つの保存領域と3つの3'→5'エキソヌクレアーゼ・ドメインをすべて保存していたことから、本研究でBmNPVゲノムからクローニングして塩基配列を決定した遺伝子はpolをコードしている遺伝子であると結論した。 BmNPV感染BM-N細胞におけるBmNPV pol転写物を、Northern blot analysis、RNase protection assay、primer extension、および5'ならびに3'RACE (rapid amplification of cDNA 3'and5'ends)などの手法を用いて解析したところ、BmNPV polは転写開始点を異にして、転写終結点を同じくする、少なくとも7種の転写物として発現されることが明らかになった。これらの転写物の転写開始点は、翻訳開始点の上流-119、-120、-122、-132、-133、-197、および-334に位置していた。このうち、転写開始点-119、-120、-122、-132および-133は、モチーフ5'-GCGTGCT-3'の2ヌクレオチド(nt)および1nt下流に存在するAとC、モチーフ内の2番目のC、およびモチーフの5ntおよび6nt上流のGとCにそれぞれ相当していた。一方、-119はモチーフ5'-AGAGCGT-3の3番目のGに相当していた。さらに、転写開始点-334は2つ直列につながったモチーフ5'-GGCGGTGG-3'の後ろの配列の3番目のGに相当していた。前二者のモチーフは、AcMNPVのpolならびに他の遺伝子においてすでに転写開始モチーフとして同定されているが、モチーフ5'-GGCGGTGG-3'は本研究で初めて提案された転写開始モチーフである
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