(1)ジャコウネズミの飼育条件の確立:ジャコウネズミを購入し、飼育条件を工夫し、確実な繁殖方法を考案した。ラットは妊娠日数20日であり、一匹の妊娠ラットから5-10匹の胎児を採取出来るが、ジャコウネズミの場合は妊娠日数が30日、一匹あたりの妊娠したジャコウネズミからはせいぜい2-4匹の胎児しか採れないので、十分な数のジャコウネズミ(とりわけ雌)を飼育していないと、発生学の研究はうまく行かないことが判明した。幸い、半年をかけてようやく飼育経験を積み、研究室で確実に繁殖させることが可能となり、飼育数も増し、この動物を使った発生学的実験を本格的に開始した。研究成果の一部はジャコウネズミの研究の先達である安井金也先生(現鹿児島大学歯学部口腔解剖学第一講座)との共著で発表した。 (2)ニワトリ胚については心臓に分布する神経の発生の研究がようやく一段落した。抗ニューロフィラメント抗体、HNK-1抗体を使用し、とりわけ心臓の静脈門から入る神経を突き止めた。ニワトリ胚へのメルコックス樹脂の注入も確実に行えるようになった。目下、成果をまとめ論文を作成中である。一部は第98回日本解剖学会総会(札幌)で発表した。また、舌下神経と頸神経の発生において、頸部の舌骨上・下筋に分布する頸神経ワナの発生と頸部の皮神経の発生のからくりを明らかにしたので、これを第99回日本解剖学会総会(山形)で発表する。 (3)ラットの胚にラテックスを注入し、下横隔静脈の発生を追跡した。教科書では泌尿生殖器の静脈血は、副腎静脈から肝臓の靜脈洞を経て心臓に注ぐと記載されているが、この下横隔静脈はそれの副行路となっていることを突き止めた。これについては田中が英文の論文を作成し、解剖学雑誌に投稿し、69巻第4号に掲載受理となった(本文末に当該科学研究の補助を受けた旨の謝辞を記させて頂いた)。
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