研究概要 |
22日令の未成熟雌性ラットに10IUのpregnant mare serum gonadotropin(PMSG)を注射し、その48時間後に5IUのhuman chorionic gonadotropin(hCG)を更に注射し、排卵を誘発させた。この排卵誘発時の各過程、すなわち無処理ラットおよびhCG注射、0,6,12時間後のラットを麻酔下4%パラフォルムアルデヒドで灌流固定し、卵巣など生殖器を切り出しパラフィン包埋を行った。5μmの切片をつくり、ポリL-リジンコートしたスライドグラスにはりつけた後、manganese superoxide dismutase(Mn-SOD)cDNAより作成した^<35>SラベルRNAプローブを用いてIn situハイブリダイゼーション法を行い、Mn-SOD mRNAを検出した。 この結果、無処理ラット卵巣でも観察された内卵胞膜細胞のMn-SOD mRNA発現量はPMSGおよびhCGのホルモン注射により著しく増加した。卵母細胞はこの間、中等量の発現でホルモン注射により著しい変化を見なかった。一方、卵胞上皮細胞については、注射後、軽度の増加を示す上皮細胞をもつ卵胞と無変化の卵胞が同じ切片上で観察され、これは連続切片により確認された。Mn-SOD mRNAの増加を示した卵胞は、排卵を起こし、黄体細胞への変化を受けつつある細胞である可能性がある。また、卵管峡部の上皮細胞でも明らかな増加を認めた。Mn-SOD mRNAの発現部位はLalorayaらが述べているpregnenpolone→progesteroneの合成の起こる部位と一致していた。この反応は滑面小胞体で起こり、Mn-SODはミトコンドリアに局在するので、Mn-SODがこの反応において、どのような関与をするかは今後の研究を待たなければならない。卵管峡部における発現の原因については不明であるが、何らかの代謝変化を反映していると考えられた。
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