Superoxide dismutase(SOD)はsuperoxide radicalを分解する酵素としてよく知られており、そのscavenger enzymeとしての役割が強調されている。種々条件下、ラットの卵巣・卵管・子宮・膣・副腎等におけるMn-SOD mRNAをIn situハイブリダイゼーション法により検索し、次の結果を得た。 1.PMSG/hCGによる排卵誘発時、内卵胞膜細胞のMn-SOD mRNA発現量は著しく増加した。一方、排卵を起こす卵胞の上皮細胞は、PMSG注射後、軽度の増加を示し、黄体細胞へ変化しながら、hCG注射24時間後には卵胞膜黄体細胞と同等の発現を示した。注射3日後、発現は黄体に局在した。子宮内膜上皮での発現はPMSG注射後から増加し始めhCG注射6-24時間にピークとなり、黄体形成の時期に消退した。 2.発情前期には内卵胞膜細胞や一部の卵胞上皮細胞に発現がみられるが、発情期から発情休止期にかけて排卵を起こす卵胞上皮細胞や黄体に発現が観察されるようになった。白体の中央部、赤血球を処理する細胞に発現が観察された。また子宮内膜においては発情期に強い発現がみられ、その後、減少した。 3.プレマリン投与により未成熟ラットの子宮内膜に発現が観察された。 4.下垂体摘出により、副腎皮質、特に束状帯、網状帯で観察されたMn-SOD mRNAは著明に減少した。卵巣では発育する卵胞が観察されず、発現はわずかであった。また、子宮でも発現は認められなくなった。これらの結果、Mn-SOD mRNAは卵巣・副腎においてプネグネノロン→プロゲステロンの経路をもつ細胞で発現しておりまた、子宮においてはエストロゲンに誘発されたものであることが示唆された。これは、Mn-SODがステロイド代謝のみならず各種代謝において重要な役割をはたしており、活性酸素の分解が細胞内代謝に必須の過程であることを示唆している。
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