1)ラット1型5αリダクターゼ(水素添加酵素)のN末端側16個のアミノ酸からなるポリペプチドを合成して、これに対するポリクローナル抗体を作成し、この抗体を用いてラットの種々の組織について免疫組織化学を行った。この結果次のことがわかった。(1)下垂体では性腺刺激ホルモン分泌細胞が陽性を呈し、去勢によって反応が増強した。(2)副腎では、皮質細胞が陽性を呈した。ここでも、去勢によって反応が増強した。(3)前立腺のうち、腹側及び背側前立腺では、大多数の上皮細胞に陽性反応が認められた。ただし、外側前立腺は陰性であった。去勢を行うと、陽性の上皮細胞の数が減ったが、陽性細胞の染色強度はむしろ増強した。電子顕微鏡レベルの免疫組織化学で、5αリダクターゼの存在を示す反応産物は粗面小胞体の膜に認められた。このことから、5αリダクターゼが小胞体膜に存在することが形態学的に初めて明らかになった。(4)これらの陽性細胞がそれぞれの場所においてジヒドロテストステロンやジヒドロプロゲステロンをつくっているものと考えられる。その生理的な意義については、ステロイドホルモンの受容体の局在との関係を含めたさらなる研究が必要である。 2)アラキドン酸からプロスタグランジンHをつくる酵素であるプロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素に対する特異抗体を用いてウシの小腸および大腸について免疫組織化学をおこなったところ、肥満細胞、粘膜筋板の平滑筋細胞、内輪筋層の平滑筋細胞、動脈の内皮細胞、筋間神経叢の神経細胞、腹膜上皮細胞などの細胞質が陽性に染色され、これらの細胞にプロスタグランジン合成能の存することが示唆された。 3)ラット2型5αリダクターゼの抗体も作成したが、1型との交叉反応が認められたためにペプチドの段階からつくり直すこととした。
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