本研究目的のRAB蛋白群中、現在までにRAB1、6と7の3種に対する特異抗体の作成に成功した。この内Late endosomeに特異的であると考えられているRAB7抗体と抗lamp1抗体(LysosomeまたはLate endosomeに特異的)を用い、ラット肺胞2型細胞内の層板小体(以下LBsと略す)の限界膜の性質について検索した。LBs限界膜は両抗体に対し染色された。この所見は、従来、肺胞表面活性物質の分泌顆粒であると考えられていたLBsが、実は同時にLate endosomeつまり細胞が外界から取り込んだ物質の処理をする細胞小器官である事が判明した。すなわち、肺胞2型細胞は、自分が分泌した活性物質を取り込み、次いでこれを自己の再処理工場へと送り込む、いわゆるリサイクリングを行っている可能性が強く示唆された。この所見は肺胞2型細胞が、活性物質に対する特異受容体をもち、分泌された活性物質中の燐脂質の大部分を再回収しているとの生理学的研究結果とも良く符合し、かつこの知見に良い形態的基盤を提供するものである。今後、Endosomeに特異的RAB蛋白抗体、とくにEndosomeからGolgi装置への膜還流に関与していると考えられているRAB9蛋白に対する抗体、またはEndosomeから表面膜への膜還流に関与するRAB4蛋白に対する抗体の作成に努力してゆく。また、LBsの前駆体と考えられているMultivesicular bodies(この細胞小器官は肺胞2型細胞に多く見られLBs形成に関与するとみなされている)の膜の性質にも同時に留意しつつ、肺胞2型細胞内での膜の流れを明らかにすべく研究を続行、発展させる。
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