微小循環系の形態と機能の研究に於て、各組織内の毛細リンパ管の微細構造と微細分布を明らかにするため、まず毛細リンパ管の確定が必要である。これまで毛細リンパ管と毛細血管を酵素組織化学的に染別・同定するため、「5'-nucleotidase-alkaline phospha-tase二重染色法」を開発し、組織切片法で種々の器官について調べてきた。さらに、本染色法が薄膜や薄壁からなる器官の伸展試料についても有効であることを明らかにした(加藤他1993a; Kato et al.1993b)。また、これら正常組織のリンパ管分布に加えて、皮膚切開などの創傷治癒や移植片の生着・増殖あるいは癌腫等の組織における新生リンパ管内皮では酵素活性が著しく高いという新しい知見が得られた(加藤、形態科学シンポジウム1993)。 平成5〜7年度にわたる一連の継続的な研究計画に於て、初年度(平成5年)計画の固体発生と系統発生については、実験材料収集の不足より次年度(平成6年)に継続して研究中である。平成5年度に於いては、おもに本酵素組織化学的技法の有用性について組織差および動物種差を検討した、その結果、酵素活性に動物種差が著しいことが明らかとなり、(加藤他 1993c)、実験動物の適用についての配慮が必要であることが新たな問題点となつた。また、血管の同定に関しては、動脈と静脈の染別についてDiaminopeptidase(DAPase)活性に着目し、本二重染色法を発展させ、新たに「DAPase-ALPase-5'-Nase三重染色法」を開発し、組織切片法でその有効性を検討している。
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