新しい精子抗原の挙動の追跡による精細胞の分化・成熟および受精過程の解析

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670021
• 研究機関: 宮崎医科大学
• 研究代表者: 年森 清隆 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (20094097)
• キーワード: 精子 / 抗原 / 単クローン抗体 / 精子形成 / 鞭毛 / 精巣 / 精巣上体 / 受精

研究概要

本研究から次の点が明らかとなつた。
1.MC101抗原について (1)本抗原は精子頭部の前先体部皮質部分に局在する。(2)分子量約155,000ダルトン(155K蛋白)である本抗原の抗原性は、精巣上体通過中に増強するが分子サイズに顕著な変化は起こらない。(3)MC101抗体(IgG_1)は155K蛋白のタンパク性の部分を特異的に認識する。(4)155Kバンド付近に糖蛋白が密集している為、155K蛋白が糖蛋白であるかどうかは決めることできなかった。(5)本抗原は、先体反応過程において精子細胞膜と先体外膜で形成されるハイブリツド膜に近接して挙動する。(6)受精率への影響については確定的な結果を得られなかった。
2.MC31抗原について pre-およびpost-meioticの時期を通して挙動を追跡できた。本抗原はpre-meioticの時期である精母細胞のゴルジ装置に一旦認められた後に、post-meioticの時期である精子細胞の中期(step 9-10)のゴルジ装置でも強く発現されるようになる。現在、この時期に発現している遺伝子産物との関係を検索している。
3.先体内物質MN9およびMC41抗原について 先体形成過程における輸送経路については詳細に観察できたが、エルトリエーターによる精細胞分離とBrefekdin Aを用いた種々のin vitro培養実験では、現在のところ、本目的のために必要な微細構造の保存に満足すべき結果が出ていない。
4.T21抗原について 本抗原と精子成熟および抗原隠蔽や免疫逃避現象との関係について検索を進めた。本抗原は、女性生殖管内通過中に抗原隠蔽度を減少させながら脱落するかエピトープ部分のコンフォメーションに変化が起こる可能性があることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Toshimori,K.,Araki,S.,Tanii,I.and Oura,C.: "Masking the cryptodeterminant on the 54-kilodalton mouse sperm surface antigen." Biol.Reprod.47. 1161-1167 (1992)
• [文献書誌] Toshimori,K.,Tanii,I.,Araki,S.and 〓ura,C.: "Characterization of the antigen recognized by a monoclonal antibody MN9:Unique transport pathway to the equatorial segment of sperm head during spermiogenesis." Cell Tissue Res.270. 459-468 (1992)
• [文献書誌] Toshimori,K.,Tanii,I.,Araki,S.and Oura,C.: "A rat sperm flagellar surface antigen that originates in the testis and is expressed on the flagellar surface during epididymal transit." Mol.Reprod.DeV.32. 399-408 (1992)
• [文献書誌] Toshimori,K.and Oura,C.: "Fine structural changes in the postacrosomal region of the hamster and mouse sperm head at the initial stage of gamete interaction in vivo." Acrh.Histol.Cytol.56. 109-116 (1993)
• [文献書誌] 年森清隆: "精巣上体における精子成熟機構" 医学のあゆみ. 166. 191-193 (1993)
• [文献書誌] Tanii,I.,Araki,S.and Toshimori,K.: "Intra-acrosomal organization of a 90-kilodalton antigen during spermiogenesis in the rat." Cell Tissue Res.(in press). (1994)