beta1→4ガラクトース転移酵素は、主にゴルジ装置のトランス側に局在するが、細胞膜にも存在しており、各々異なった機能を果していると考えられている。 我々はすでに、beta1→4ガラクトース転移酵素はそのアミノ末端部分が翻訳後特異的に切断されて短縮していることを明らかにし、これに基づいて、本酵素がゴルジ装置に局在するためにはこの特異的な切断が必要であり、細胞膜に局在する酵素はこの切断が起きていないものであるという仮説を提出している。 本研究により、beta1→4ガラクトース転移酵素をラット肝臓より精製し、新たに本酵素に対するモノクローナル抗体GTL2を作製した。GTL2は化学的処理または酵素処理により糖鎖を変形、除去したbeta1→4ガラクトース転移酵素と反応することから、beta1→4ガラクトース転移酵素のタンパク質部分を認識している。組織化学的手法により、GTL2は光学顕微鏡レベルでラットの肝臓、精巣上体、唾液腺のゴルジ野を強く認識した。また、電子顕微鏡レベルで、ゴルジ装置のトランス側を特異的に認識し、細胞膜を認識しなかった。 したがって、GTL2はゴルジ装置に局在するbeta1→4ガラクトース転移酵素に特異的な抗体であり、この抗体の認識部位はゴルジ装置のターゲッテイング部位に極めて近接したものであることを示した。 さらに、GTL2はヒトの組替えbeta1→4ガラクトース転移酵素と交差反応を示すことを明かにした。GTL2を用いた分析を発展させることで、ヒトのゴルジ装置に局在するbeta1→4ガラクトーク転移酵素も、ラットの場合と同様にアミノ末端部分が切断されていることを示す証拠を提出するものとなる。
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